流れ星が消える前に願いを3度唱えれば、その願いが成就するという。
そんなことはとても無理だと思いつつも、サトシは今日も学校からの帰り道、日が暮れた空を眺めていた。来週には、ここから遠く離れた地方都市への引っ越しが決まっている。父親の仕事の関係で、既に引っ越しには慣れっこになっていた。しかし、今回は珍しくこの町に長くいたせいか、いつのまにか離れたくないという気持が強くなっていた。
サトシはこの町に越してきてから、担任の勧めもあり、バレーボールを始めた。担任が部活の顧問だったので、試合に出場できるだけの部員を揃えるためにサトシを誘ったのだが、これが意外にもサトシに合っていたらしい。いつしか、セッターとしてチームの要を担うまでになっていた。
それだけに、今度の引っ越しを告げたとき、みんなの落胆は大きかった。さし当たって来月から始まる県大会の予選に必要な部員をどう補充するかというだけの問題ではない。今まで作り上げてきたチームの連携や一体感、そしてサトシが加わって生まれていた独特な雰囲気といったものがすべて失われてしまうのだ。サトシはコートに立つと後ろを振り返らなくても、今は誰がどこにいるのか分かったが、このメンバーでなかったらそこまで部活に入れ込まなかったのではないか、と思う。
しかし、もはや引っ越しは決まったことである。今さらサトシにできることと言ったら、引っ越しがなくなることを祈るぐらいしかないのだ。そんな訳で、星に願いを託そうと夜空を見上げているサトシの目の前に、大きな流れ星が一筋、漆黒の空をゆっくりと走っていくのが見えた。サトシは慌てて両の手を合わせると口の中で小さく3度つぶやく。
「引っ越しがなくなりますように、引っ越しがなくなりますように……。」
流れ星はおよそ0.6秒ほどで燃え尽きるという。そんな、短い間にサトシが願いを唱え終わるはずもないのだが、何故かその願いは聞き届けられた。
サトシが転居する予定だった都市に巨大な隕石が飛来し、都市は灰燼に帰したのである。
(04.04.30)
2005年07月08日
この記事へのTrackBack URL
http://blog.seesaa.jp/tb/4914194
http://blog.seesaa.jp/tb/4914194



ラストの願いが叶う。は予測しようと思えばできる(引越し中止)ものですが、隕石とは壮大な・・・面白かったです。暇な時にまた他の作遺品も拝見させてもらいます。
超短編小説会のたまごでした。