火星に降り立った宇宙飛行士を迎えたのは、赤茶けた大地だけだった。
「やっぱりな。」
年の一番若いグレアム航海士が、つい本音を口にする。
「火星に来る前から、こんな所だって事は分かっていたんだ。赤い、赤い、赤い、ただそれだけだ!」
「船長、まずいですね。これだけ何もないと、テレビ映りもサマにならないでしょう。今後の宇宙開発の予算にも影響することになりかねない・・。」
ここまで来て弱気になったハンセン機関士をチョン船長がたしなめる。
「大丈夫だ。こんな事もあろうかと、私はちゃんと準備してきている。探査船の格納庫からボックスA-9を持ってきてくれ。」
グレアム航海士が運んできたボックスを開けると、中にはタコの入った水槽があった。」
「船長、まさかそれを火星人というつもりでは・・・。」
「ハンセン君、カメラをこっちに向けて構えてくれ。グレアム君は水槽のタコを出して、人類の記念となる握手をするんだ。大丈夫、ヒューストンにはハイライトシーンを編集して使うということで、すでに話は着いている。」
グレアム航海士が困惑しながら水槽の蓋を外すと、タコは大きく膨らみ弾け飛んだ。
火星の気圧は地球の百分の一もない。
(2004.10.23)
2005年02月11日
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とてもおもしろかったです。