2006年03月27日

アイドル

 まぁ、なんにせよ人気商売ってのは大変なものだよな。人気がないのはどうにもならないし、人気が出るのもそれなりに理由っていうものがいるものだからな。
 マジック界のアイドルってキャッチフレーズで売り出してた「田山ナオ」ってタレントを知ってるかな?容姿は、ま、顔の方はちょっとかわいいかな、と言う程度だったんだけど確かにマジックの方はすごかった。演出も実に独創的なんだ。そのくせ、ステージから降りるとやたらケラケラ笑う女で、知性のカケラも感じさせなかったんだが、そのギャップがよかったのかな。売れ出すのも、それほど時間がかからなかったな。
 彼女のマジックは独特のスタイルがあってね。まず、ステージから客の一人をアシスタントに指名して、その客と一緒にマジックをするんだ。そのやり方が観客に親近感を呼んで、ますます人気が出たのかな。ともかく、彼女のマジックはいつもそうだった。だけどね、もしアシスタントに指名される客のことをいつも注意深く見ていた人がいたら、やがてあることに気がついたんじゃないのかなぁ。つまり、アシスタントをする人は髪型や眼鏡、顔つきや服装といった外見は違っていても、歩き方や雰囲気には時々共通点があるってことに。カードマジックをするときは背の高い人、縄抜けはちょっと太った人っていうぐあいにね。えっ、彼らはサクラだったのかって?いいや、正確にはちょっと違うな。実は彼らが本当のマジシャンだったんだよ。
 もう分かったろう。アイドルが手渡したテンガロンハットをチェックする振りをして袖口からハトを忍ばせていたのも彼らだし、トランプをカットするような振りをしてカードを順番に並べて見せたのも彼らの手際だったんだ。うまいもんだろ?彼らの技が冴えれば冴えるほど、誰もそのことに気づかないってわけなのさ。
 でも、バレるのも意外に早かったな。あの日、彼女はいつもの通りステージ上でまず始めにアシスタントの指名をしたのさ。一組のトランプを握りながら、「今日はカードマジックだから背の高い西田さんは……えーと、ああ、あそこ」とか思いながら、絶妙に一般人に変装したマジシャンを指さしたんだ。打ち合わせ通りにね。そしたら、その2列前の席で一生懸命手を挙げていたファンがやおら立ち上がって、大声を上げてガッツポーズをしたのさ。で、勢いよくステージに向かって駆け出したもんさ。ステージ上では彼女の手を握りしめて「ナオさん、俺感激です。何でも言ってください。精一杯アシスタントします」っなんて言ってるんだ。あの時の彼女の顔、すごかったね。彼女に本当にマジックが使えたら、あんな男なんてたちどころに消して見せたんじゃないかな。

(2005.10.1)


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